2018年6月11日月曜日

リバプール④ 夕日そして港町


リバプール初日、到着してすぐに訪れたアルバートドックの夕日です。本当に美して・・・満たされました。

リバプールの夕日


そして、最終日に訪れた昼間のアルバートドック。

なんとなく、横浜みなとみらいやサンフランシスコのウォーターフロントとイメージが重なります。横浜は育ててくれた街、サウンフランシスコは意志の力で向かった街。そんな縁のある場所をイギリスの中でひとつのものとして感じたのは初めての経験です。


アルバートドック

いまでは美術館や博物館やレストランに囲まれた世界遺産の一部であるアルバート・ドックですが、古くは大英帝国の繁栄をマンチェスターの産業革命とともに支えたイギリス最大の奴隷貿易港でした。

アフリカから人間を奴隷として連れてきて、新大陸アメリカへ・・・。当時は、奴隷商の看板があちこちに立ち並ぶほど誰も疑問に思わない「当たり前」のビジネスだったことは驚きです。でも、今も身体的のみならず精神的暴力による人間同士の所有関係はもっと巧妙に形を変えて存在しつづけているのかもしれません・・・。

そんな歴史文脈に生まれたジョン・ニュートン(John Newton)という人は、奴隷船の船長として暮らしたのち、勉強して牧師となり奴隷貿易へ関わった悔恨と神の恩寵を讃え、有名なアメイジング・グレース(Amazing Grace) を作詞し、奴隷貿易に反対したりしたとか。

あの凜とした美しい歌の生まれた背景に一人の人間の大きな精神的転機と行動力があったことをはじめて知りました。そして、その転機への第一歩は、「難破しそうになった船の中」で訪れたようです。

そして、彼は、英国で奴隷貿易の禁止が決まった年にまるで使命を終えたかのようにこの世を去っています。

自分は人生の荒波の中で難破しそうだよ・・・なんて思われている方々も希望を失うことなかれです(笑)





テート美術館から眺めたリバプール美術館の”Imagine Peace"の文字。





2018年6月4日月曜日

リバプール③ テート美術館ー見えないものを探求するー


アルバートドックは世界遺産の一部だそうですが、周囲には博物館や美術館がいくつもあります。イギリスの良いところは、博物館や美術館の入館料がいらないところです。

テート・リバプール美術館を訪れると”Exploring the unseen(見えないものを探求する)”という展覧会が催されていました。ウォーターフロントにあるすてきなたたずまいの美術館でした。



私の足が止まったのは英国の画家ターナー(Joseph Mallord William Turner) の「吹雪、港の沖合の蒸気船」の前です・・・。

うねるような吹雪のなかのまるで塊のような蒸気船と言われていますが、私には、ぼんやりとはっきりしないの絵の真ん中の空間に現れてきている光だけがリアルにせまって感じられました。

有名な絵なので、教科書か何かで見たことがあったのですが、その中の光はあまり印象がなかったのです・・・。

本物の絵の持つ力でしょうか。

この絵はどういう意味だろう・・・とあれこれ考え始め、絵の隣の説明書きに目をやると

「この絵は、理解されるために描いたのではないのです」

という一文が目に飛び込んできて、びっくり。

失礼いたしました・・・。そうでした、相変わらず頭でっかちな私。

偶然ですが、この「吹雪、港の沖合の蒸気船」の絵から浮かんだイメージ、ユングの「リバプールの夢」の暗くて煤けたはっきりしない中に現れてくる光の源そのものであるマグノリアの木のヴィジョンのイメージと重なります。真ん中の空間にポッカリと現れている光が・・・。

今回の旅のシンクロニシティー(共時性)です。

2018年6月3日日曜日

リバプール② ユングが夢で訪れた街


ビートルズが演奏していたことで有名なCavern Club(キャヴァーン・クラブ)などのライブハウスやパブがある中心街のMathew Street(マシューストリート)ですが、そこにスイスの精神科医・心理学者であるCG.Jung(カール・グスタフ・ユング)の小さな銅像があります。


The bust of Jung in Liverpool
と言っても、ユングは実際にリバプールを訪れたわけではなく、夢の中でヴィジョンとして"Liverpool(リバプール)"を訪れていたのです。そのヴィジョンの内容から、この辺りのことだろう・・・と思われるMathewStreetの小さな広場付近に建てられたようです。

この夢に関しては、彼の自伝的な本”Memories,Dream, Reflections"に書かれています。
“This is the dream I mentioned earlier.  I found myself in a dirty, sooty city.  It was night, and winter, and dark, and raining.  I was in Liverpool."私は、汚い、すすけた街にいた。冬の暗い夜そして雨が降っていた。私はリバプールにいたのだ。
と、夢の報告は始まります。
Mathew Street
そして、雨と霧と煙ですべてがぼんやりしていて薄暗いあるスクエアで、小さな島が陽の光で輝いているのを観ます。ユングはその島に立つ一本のマグノリアの木に惹きつけられます。その木は、陽の光の中に立っており、光の源そのものだったのです。 

不快なリバプールの天候をぼやき、そのマグノリアの木が目に入っていないのが明らかな同郷のスイス人たち一行が、そのリバプールに住んでいるという一人のスイス人に驚きを示すものの、ユングは、
I thought ”I know very well why he has settled here” and I woke up. 私は、なぜ彼(リバプールに住んでいるスイス人)がここに居を構えることにしたのかがよくわかると思い、そして目覚めたのだ。
 と夢は終わります。

夢の中のリバプールの薄暗い情景はこのころのユングの心情を表していたそうです(その頃、ユングはサイエンスの中で何かを成し遂げたいとこころに願っていたという説もあるそうです)が、そんな中にこの世のものとは思えないほど美しいヴィジョンをみたことにより生きていけるのだと。
Liverpool is the ‘pool of life’.  The ‘liver’ according to an old view, is the seat of life – that which ‘makes to live’.” リバプールとは、’命のたまり’である。Liver(肝臓)とは、古くは「命の座」命を生かすものと捉えられていた。
という自らの夢についてのユングのコメントが小さな銅像と一緒に刻まれていました。

ところで’pool of life'って、どういう和訳が適切なんでしょう。やはり、集合無意識のユングですから、1つの命の中のつながりを持った命のイメージがありますが・・・。


マシュー・ストリートにあるキャヴァーンクラブ

そういえば、リバプール初日の朝、

「僕、寝ながら起きてた〜。それで、朝だうれしいって!」

と息子。???と思いながらも、息子は日本語がとみに苦手なので、あまり注意も払ってなかったのですが、小さな集合無意識?である家族の小さい人からの言葉で始まった不思議です。

2018年6月1日金曜日

リバプール① 開いていたStrawberry Fieldsへの門


ジョン・レノンに名曲 " Strawberry Fields Forever "をかくインスピレーションを与えたという場所を訪ねました。

ストロベリー・フィールズとは、こころの力を護る場所・・・。


開いていたストロベリー・フィールズへの門

ジョン・レノンが幼少期に暮らしたミミ伯母さんの家は、他のメンバーと比べると比較的立派な家だったそうです。

でも、ジョンの家族生活は決して恵まれたものではありません。海に出て帰ってこない父親。そんな父親と離婚して他の男性との生活を始めた母親からも幼くして別れ、ジョンは叔母さんに引き取られて暮らしています。

ジョンが10代の頃には、ミミ叔母さんの夫であり父親がわりだったジョージ叔父さんが旅立ってしまいます。母親を慕って近所にあった母の家で異父妹たちと過ごしたりするものの、その母もジョンの暮らす叔母さんの家の前で車にひかれて亡くなってしまいます。

普通に考えると、かなりトラウマティックな幼少期です。

過酷な現実とは、時に人から夢や希望を奪いさってしまうことがあります。これが「現実に打ちのめされた状況」というものー。

次々と起こった大切な人たちとの葛藤や別離の中、このストロベリー・フィールズ(苺の原っぱ)の静かな役割に深い力を感じます。

当時、ストロベリー・フィールズの中には、Salvation Armyによる女子孤児院があり、近所に住んでいたジョンは友達と一日中その自然の中を駆け回ったり、木に登ったり、空想に浸ったりしていたそうです。

静かで平和で子どもたちが安心して自由に身体を動かして遊べる場所であるストロベリー・フィールズの役割、それは現実からこころの力を護ることではなかったかと。その後もここはジョン・レノンの中では特別な位置を占めていたようです。

なんと、すてきなセラピスト。

ふと、普段は閉まっているストロベリー・フィールズへ続く「苺色の門」がこの日は開いていたことに気がつきました・・・。



Let me take you down, cos I'm going to Strawberry Fields
一緒にストロベリーフィールズへ行こうよ

Nothing is real and nothing to get hung about
何も実在しない、何も心配することもない、自由なんだ

Strawberry Fields forever
ストロベリーフィールズ、永遠に

(和訳 by YK) 









Merry Christmas 2018

毎年、クリスマスの時期は願わくば雪が降って欲しい・・・と思ってしまいます。 12月の初めに、1週間研修でロンドンに滞在していました。 夜しかゆっくり街を見られなかったのですが、イルミネーションもお店の飾り付けも本当に華やかできれいでした。 それに比...